お湯を沸かしたいときにいつも気になること。それは「電気・ガスどっちが安いのか?」ということです。
給湯スイッチを入れれば蛇口からはお湯が出てきます。電気ケトルやヤカンで湯沸かしもできます。どれが一番効率的で安いんでしょうか?
ガッツリ計算してて長いので、忙しい方は まとめ だけ見てください。
目次
水1Lを沸かしてみよう!
水道の温度は関東での年間平均でおよそ15℃だそうです。
15℃の水1Lを沸かすのに、電気・都市ガス・LPガス、それぞれいくらかかるのでしょうか? きっちり検証してみました。
水1Lを沸かすのにいくら?
必要な熱量は
$$1000\mathrm{cm^3} \times (100\mathrm{^\circ C}-15\mathrm{^\circ C}) \times 4.184\, \mathrm{J/cal}\div 10^6 = 0.356\,\mathrm{MJ}$$
つまり、エネルギー源に限らず 0.356メガジュール の熱量を水に与えられれば沸騰するということです。
電気
料金
中部電力の一般家庭用契約「従量電灯B」で計算してみましょう。
区分 | 料金 | |
---|---|---|
基本料金 | 10A 契約 | 280.80 円/月 |
15A 契約 | 421.20 円/月 | |
20A 契約 | 561.60 円/月 | |
30A 契約 | 842.40 円/月 | |
40A 契約 | 1,123.20 円/月 | |
50A 契約 | 1,404.00 円/月 | |
60A 契約 | 1,684.80 円/月 | |
電力量料金 | ~120kWh | 20.68 円/kWh |
120~300kWh | 25.08 円/kWh | |
300kWh~ | 27.97 円/kWh |
例えば、40A契約で200kWh使った場合は、
$$1123.20 + 20.68\,\mathrm{円/kWh} \times 120\mathrm{kWh} + 25.08\,\mathrm{円/kWh} \times (200-120)\,\mathrm{kWh} \\= 5611.20\,円$$
というように計算します。
一般的な家庭での平均電気使用量は400~500kWhだそうです。したがって、水を沸かすのに電気を使った場合の電気代の増減は、区分「300kWh~」の27.97円/kWhを使って計算すれば良さそうです。
効率
電気ケトルの定番商品、ティファールの「ジャスティンプラス1.2L」のスペック表記から計算しましょう。
- カップ1杯(140cc)を約60秒で沸かします。
- 電気代はカップ1杯でわずか約0.55円。
- 水温・室温は23℃、電気代は27円/kWhで計算。
23℃の水140ccを沸かす(100℃にする)のに必要なエネルギーは、
$$140\mathrm{cc} \times (100\mathrm{^\circ C}-23\mathrm{^\circ C})=10,780\mathrm{cal}$$
Whに直すと、
$$10,780\mathrm{cal} * 4.184\mathrm{J/cal} / 3600 = 12.53 \mathrm{Wh}$$
一方、電気代から消費電力量を計算すると、
$$0.55円\div 27\mathrm{円/kWh} * 1000 = 20.37 \mathrm{Wh}$$
つまり効率は、
$$\frac{12.53\mathrm{Wh}}{20.37\mathrm{Wh}}\times 100=61.5\%$$
なので、61.5%となります。
- 電気ケトルの消費電力
- 電気ケトルの平均消費電力も計算できます。20.37Whの電力量を60秒で消費する(お湯が沸く)わけですから、
$$20.37\mathrm{Wh}\times 3600 \div 60 = 1222\mathrm{W}$$
つまり、この電気ケトルは平均1,222Wで稼動するわけですね。
この製品の定格消費電力は1,250Wですから、ほぼピッタリですね。
これが効率の良い湯沸かしポットだと、効率は77%というものもあります(象印製電気まほうびん CV-WA30 で計算)。
水1Lを沸かすのにいくら?
ティファールのスペックでは23℃の水を沸かしていましたが、ここでは他と合わせて15℃の水で計算し直してみましょう。
必要な熱量、0.356MJの熱を得るためには、効率61.5%を加味すると、
$$0.356\,\mathrm{MJ}\div 3600\times 1000\div 0.615 = 0.161\,\mathrm{kWh}$$
上の料金表に従えば、湯沸かしにかかる従量料金は、
$$0.161\,\mathrm{kWh}\times 27.97\,\mathrm{円/kWh}=4.50\,円$$
1L沸かすには4.50円かかるということが分かりました!
LPガス
料金
とあるLPガス会社(というか私の住居)における2016年現在のLPガス料金は以下のようになっています。
基本料金 | 2,000 円 | |
---|---|---|
従量料金 | 0.0~10.0 m3 | 510 円/m3 |
10.0~20.0 m3 | 490 円/m3 | |
20.0~30.0 m3 | 470 円/m3 | |
30.0 m3~ | 440 円/m3 |
※ 金額は税抜き。
ちなみに少し古いですが、日本エネルギー経済研究所によると、2006年度のLPガスの平均消費量は以下の通りだそうです。
月平均使用量 | |
---|---|
2人以下 | 6.5 m3 |
3人 | 8.9 m3 |
4人以上 | 11.3~12.0 m3 |
従量料金は使用量によって値段が変わります、ここは一般的ということで、4人家庭の想定して 10.0~20.0 m3 の金額(490 円/m3)を使いましょう。
燃焼熱
LPガス安全協会によれば、LPガスについてこう書かれています。
家庭で使われているLPガスの主成分は、プロパン(C3H8)がもっとも多くなっています。このためLPガスはプロパンガスとも呼ばれています。
(中略)
気体のプロパン1m3を燃やすと99MJ(24,000Kcal)、ブタン1m3は 128MJ(31,000Kcal)の熱量を発生します。
プロパンの燃焼熱は、24,000 [kcal/m3]だそうです。
- 高校化学
- 一方、高校化学の燃焼熱からも確認してみましょう。退屈ですがお付き合いを。プロパンの燃焼熱は 2220.0 [kJ/mol] です。1molは22.4Lなので、
$$2220\div 22.4 = 99.1\, \mathrm{(kJ/L)} $$
です。Lは1000倍してm3、kJも1000倍してMJになるので、
$$99.1\, \mathrm{(kJ/L)} = 99.1\, \mathrm{(MJ/m^3)}$$
確認できましたね。
1m3当たり99.1MJです。
効率
一般的なガス給湯器の効率はおよそ80%だそうです。
一方、コンロにやかんをかけて湯を沸かすと効率は60%程度になってしまいます。周りの空気も温めてしまいますからね。
水1Lを沸かすのにいくら?
冷たい水をコンロにかける場合
必要な熱量、0.356MJの熱を得るためには、効率60%を加味すると、
$$0.356\,\mathrm{MJ}\div 99.1\,\mathrm{MJ/m^3}\div 0.60 = 0.00599\,\mathrm{m^3}$$
上の料金表に従えば、湯沸かしにかかる従量料金は、
$$0.00599\,\mathrm{m^3}\times 490\,\mathrm{円/m^3}=2.94\,円$$
1L沸かすには2.94円かかるということが分かりました!
給湯器で沸かしたお湯をコンロにかける場合
コンロは効率が低いので、給湯器で40℃に沸かしてからコンロにかけた場合を考えてみましょう。
15℃の水1Lを40℃にするには 0.105MJ、40℃を100℃にするには 0.251MJ の熱量が必要です。
$$0.105\,\mathrm{MJ}\div 99.1\,\mathrm{MJ/M^3}\div 0.80 + 0.251\,\mathrm{MJ}\div 99.1\,\mathrm{MJ/M^3}\div 0.60 = 0.00555\,\mathrm{m^3}$$
$$0.00555\,\mathrm{m^3}\times 490\,\mathrm{円/m^3}=2.72\,円$$
1L沸かすには2.72円かかるということが分かりました!
都市ガス
燃焼熱
これに対して都市ガスは46MJ(11,000Kcal)です。気体のプロパンは都市ガスより約2.2倍の熱量があります。
都市ガスでは、1m3当たり46MJの熱量が得られます。
料金
東邦ガスの料金を参考にしてみましょう。他の光熱費もそうですが、時期によって料金は変動するものなので、「基準単位料金」というもので計算します。
基本料金 | 従量料金(基準単位料金) | |
0~20 m3 | 745.20 円 | 206.70 円/m3 |
21~50 m3 | 1,560.00 円 | 165.96 円/m3 |
51~100 m3 | 1,800.00 円 | 161.16 円/m3 |
101~250 m3 | 2,040.00 円 | 158.76 円/m3 |
251~500 m3 | 2,600.00 円 | 156.52 円/m3 |
501 m3~ | 6,980.00 円 | 147.76 円/m3 |
LPガスの平均使用量と同じエネルギーが必要だと考えると、4人家庭では平均して24.3~25.8 m3の都市ガスを利用することになります。なので、165.96円/m3を用いるのが妥当でしょう。
水1Lを沸かすのにいくら?
LPガスと同じく、給湯器を使うかどうかで分けます。
冷たい水をコンロにかける場合
必要な熱量、0.356MJの熱を得るためには、効率60%を加味すると、
$$0.356\,\mathrm{MJ}\div 46\,\mathrm{MJ/m^3}\div 0.60 = 0.0129\,\mathrm{m^3}$$
上の料金表に従えば、湯沸かしにかかる従量料金は、
$$0.0129\,\mathrm{m^3}\times 165.96\,\mathrm{円/m^3}=2.14\,円$$
1L沸かすには2.14円かかるということが分かりました!
給湯器で沸かしたお湯をコンロにかける場合
給湯器で40℃に沸かしてからコンロにかけた場合を考えてみましょう。
$$0.105\,\mathrm{MJ}\div 46\,\mathrm{MJ/M^3}\div 0.80 + 0.251\,\mathrm{MJ}\div 46\,\mathrm{MJ/M^3}\div 0.60 = 0.0119\,\mathrm{m^3}$$
$$0.0119\,\mathrm{m^3}\times 165.96\,\mathrm{円/m^3}=1.97\,円$$
1L沸かすには1.97円かかるということが分かりました!
まとめ
エネルギー源 | 湯沸かし方法 | 水1L沸かすのに かかる費用 |
毎日3回 1ヶ月で |
---|---|---|---|
電気 | 電気ケトル | 4.50 円 | 405 円 |
LPガス | やかん | 2.94 円 | 265 円 |
給湯器+やかん | 2.72 円 | 245 円 | |
都市ガス | やかん | 2.14 円 | 193 円 |
給湯器+やかん | 1.97 円 | 177 円 |
- 電気は高い。LPガスよりは都市ガスより高いが、電気ほど高くはない。
- 冷たい水をコンロにかけるよりガス給湯器を使った方が安いが、差は小さい。
といったところですかね。
そもそも
湯沸かしの手段を変えたところでそもそも金額があまり大きくないので、
「数リットルの湯沸かしを悩むくらいなら、エアコンの節約(扇風機の活用)や風呂の節約(シャワーや追い炊きを減らす)を考える方が重要」
というのが私の感想です。
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